撮影:大河内禎

 

8月25日12時7分、ASKAさんがCHAGE and ASKA(以下、C&A)を脱退したことが報じられ、大きな話題になっている。実は今年2月、『婦人公論』において、ライブや歌に対する思いを語っていた。聞き手は長年交流のある、作家の山口ミルコさんだ。

C&A人気が日本を席捲していた1990年代、山口さんは編集者としてC&Aの書籍を担当。国内外を問わずツアーに同行し、その音楽をそばで味わい、仕事を共にしてきた。だから2014年に起きた事件以来、「自分にできることはないか」と考えてきたという。そしてASKAさんは18年、5年7ヵ月ぶりにステージに戻ってきた。今日も精力的にライブを続けているーー(聞き手=山口ミルコ 撮影=大河内禎)

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◆待たせたファンに加え、新たな客層も得て

──すっかりご無沙汰しています。

ミルコとは90年代のはじめ頃からのつきあい。勤めていた出版社をやめてからはがんで闘病していた、と聞いていたけど、いまは書く側に変わったんだね。

 

──ある日ふとテレビを見たら、ASKAさんが深々と頭を下げていて。その頃の私は、引きこもるようにしてはじめての書き下ろしに取り組んでいたので、たくさんお世話になったASKAさんに何もできないまま、日々が過ぎてしまいました。こうしてステージに復帰した思いを聞かせてください。

長年コンサートをやってきたテクニックがあるから、久しぶりとはいえ緊張といったものはなかったかな。

18年11月、12月は「billboard clas-sics ASKA PREMIUM SYM-PHONIC CONCERT 2018 ―THE PRIDE―」と題して、クラシックのフルオーケストラをバックに歌わせてもらって。

そして19年の2月からは「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA ―40年のありったけ―」として、通常のバンドスタイルのツアーがはじまり、春まで続きます。バックが、オーケストラからバンドへ。こういうスタイルになったのは、流れ、だね。僕が仕掛けたのでもなんでもなく。

最初はアジアツアーの話がきたんです。「日本で歌えないなら、われわれの国で歌ってください」と誘ってくれたところがあって。ただ、北京と上海のスケジュールがうまく合わない。そんなとき、ビルボードクラシックスが「うちがやるコンサートのゲストボーカリストとして出てほしい」と声をかけてくださった。

僕の置かれた状況を考えると、本当にいいのだろうか、という気持ちはありました。でも徐々に、これは運命が用意してくれた流れなんだ、という思いに変わっていった。

 

──フルオーケストラがバックだと、ボーカリストがぐんと際立って、〈楽器としてのASKA〉を存分に味わえるんですよ。弦の振動と美しく響き合って、よく鳴ってる管楽器、という感じがしました。一方、バンドスタイルのライブは、長年の信頼関係が伝わってくるバンドサウンドが楽しめて。

そう感じてもらえたなら、うれしい。やっぱりライブは、非日常的で特別な空間にしたいからね。

正直なことを言えば、昨年はツアー初日を終えたあと風邪を引いてしまって。最終の追加公演まで、初日以外は喉が「ガラガラ」なままで歌うことになり、せっかく来ていただいたお客さんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

同時に、はじめて僕の歌を聴きに来られた方には「これがASKAだと思わないでくれ」という気持ちが混ざり合っての公演だった。なので、余計に喉を痛めていくばかりだよね。わかっちゃいるけどやめられない。これは、テクニックとは別の話です。(笑)