人が手をかけ続けることが大切

ことに中山間地に点在する集落の空き家化が社会問題となっているのは、それが環境問題に直結しているからだ。

日本と同じように、イタリアは、丘陵地帯を含めれば中山間地が国土の約7割を占め、森や水に恵まれた国である。

しかし、一度、人の手が入った山を荒らさないためには、人が手をかけ続けることが大切である。

枝打ちをし、下草を刈り、広葉樹を増やし、森を育てていく。

集落の空き家化が社会問題となっているのは、それが環境問題に直結しているからだ(撮影:島村菜津/写真提供:光文社)

荒れた山は里山に獣害をもたらし、保湿力を失って下流域の水被害を大きくする。

コンクリート護岸やダムは一種の対症療法に過ぎない。

気候変動にも悩まされている今こそ、山村で連綿と続いてきた人々の暮らしに目を向ける必要がある。

そう訴えるのは、イタリア山岳部共同体連合の代表、マルコ・ブッソーネである。

「(山の)集落は、何も都市の養子になりたいわけではないのです。ただ、都市と対等な協定を結びたいのです。都市の人々もまた、我々が彼らを必要としているように、私たちを必要としているのです。

私たちが、ここに暮らし続けることで、生態系バランスが保たれているからです。たとえば、水、森林、二酸化炭素の削減、地下水の安定です。本当に都市住民が、我々に手を貸してくれるというのならば、水道料金に4ユーロ上乗せしてくれればいいのです」