「不安」「怒り」「妬み」の正体は?
では、今に集中して生きれば、なぜ負の感情を消し去れるのか。それを知るために、まずは「不安」「怒り」「妬み」といった負の感情の正体を知っておきましょう。
そもそも「不安」というものには実体がありません。たとえば、家を出た後に「あれ、ガスの火は消したっけ? 火事になったらどうしよう」と思っても、それは実際に起こっていることではありませんよね。
起きてもいないことに気を取られるくらいなら、その不安を現実にしないよう、出かける前に「ガスの火は消した、大丈夫!」と、きちんと確認すればいいのです。不安を生み出しているのは自分の心ですから、「今、このとき」に集中して行動すれば、不安は生まれないというわけです。
「怒り」は、心が毒に侵されている状態。仏教には、「心の三毒」を表す「貪瞋痴(とんじんち)」という言葉があり、怒りを意味するのが「瞋」です。不快なことに対して激しく感情をぶちまけ、周囲の人までも不快にさせる「瞋」の状態に陥ってしまったら、「今、自分は毒に侵されている」と自覚して、頭にカーッと血が上る前に、丹田(おへその下あたり)に意識を集中させて、ゆっくり呼吸をしてみましょう。
そして、「待てよ、待てよ、待てよ」「ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん」など、自分の好きな言葉を3回唱えて、毒に侵された「今の自分の心」を鎮めてください。
また、「山是山(やまはこれやま)、水是水(みずはこれみず)」という禅の教えのように、人にはそれぞれ異なる価値観や生き方があるもの。そう心得ていれば、自分と異なる意見をぶつけられても、「相手には相手の考え方がある」と思えて、それほど頭に血が上ることはないでしょう。
「妬み」の感情も、他者と自分を比較することから生まれます。「あの人は何不自由ない暮らしをしているのに、私はなぜ苦労ばかりなの」と比較するから、妬みの感情が湧いてしまう。「人は人、自分は自分」と、他者に惑わされずに、今の自分が満ち足りるように意識を集中する。そうすれば、他者を羨む心も自ずと薄れていくはずです。
このような禅の基本的な教えを踏まえたうえで、人間が本来持っている「美しい心」を取り戻すための7つの生活習慣を次のページからお伝えします。ひとつでもふたつでも、できそうなことから100日間続けてみてください。100日間続いたら、それはあなたにとって欠かせない習慣になっているはずです。
そして、その日々の習慣が「負の感情」を取り払い、あなた自身の人生をさらに輝けるものにしてくれるのです。