ゲーム会社に就職すると決めたときは、父と喧嘩になりました。それでも僕は、どうしても譲れなかった。あの頑固さが自分のどこから湧いてきたのか、今でもよくわかりません。ただ、父に「映画監督になれ」と言われて育っていたら今の僕はなかったという気がします。つまり、単純に生き物としての反発心が働いたのかなと。

でも今では両親に感謝しています。自らも絵を描くことが好きだった母が、「好きにすればいいよ」と言ってくれたことに救われたのです。父も最後には、「5年やってみて違うと思ったら戻ってこい」とチャンスを与えてくれました。

その後自分も親になり、父が反対したのは「跡継ぎがほしい」というエゴではなく、僕の幸せを願っていたからだったのだということがわかりました。とはいえ、自分自身の経験から、親が子どもにできるのは選択肢を提示することだけであって、決して押しつけてはいけないと肝に銘じています。

 

◆前作のヒットで社会から役割をいただいた

『天気の子』という作品を通じてお伝えしたいのも、自分で自分の生き方を決めることの大切さです。親子で鑑賞して「どう思った?」と会話の糸口にしていただきたいと願っています。一つの作品を鑑賞し、体験を共有することで、世代や価値観の違いを超えてコミュニケーションの輪が広がることこそがエンターテインメントの役割であり、素晴らしさだと思うのです。

前作の興行成績を上回る作品にしなくては、というプレッシャーはあまりなかった気がします。ただ大ヒットを経て、作品を作るうえでの僕の意識が変わったということはありました。それまで僕の映画を観てくれていたのは主にアニメ好きな人でしたが、観客層が広がったので、どなたにも楽しんでいただける作品を作らなくては、という責任みたいなものを感じて……。自惚れていると思う人がいるかもしれませんが、『君の名は。』を国内で観てくれた1900万人という数は東京都の人口より多いわけで、その意味では観客からというより、サイズ感的に社会から大きな役割をいただいたような感覚があったのです。

いずれにしても、作品を通して何を語るべきなのだろう?『君の名は。』の次の作品としてふさわしい物語とは?と、さまざまな角度から思いを巡らせた末に、“天気”をテーマにしようと決めました。

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物語は高校1年生の少年・帆高が家出して離島から上京するところから始まる。彼の孤独な状況を代弁するかのように、そして暗澹たる未来を予感させるかのように降り続く雨。そんななか帆高は「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な力を備えた少女・陽菜(ひな)と出会い、「天気」を仕事にすることを思いつくが……。

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改めて考えてみると、前作のプロモーションで忙しくしていた2016年の夏にはすでに、「天気をテーマにするのはどうだろう?」という発想がなんとなく浮かんでいたのです。「疲れたなあ」と言いながら、ふと空を見上げたらモコモコとした積乱雲が目に飛び込んできて、「あの雲の上はさぞかし気持ちがいいだろうな」と思ったのがきっかけでした。

そのとき僕は、晴れ渡った青空に浮かぶ真っ白な雲に心を癒やされたのですが、逆にどんよりとした曇り空なら鬱々としていたことでしょう。天気は人の心とつながっていると思うのです。