僕は、アニメーションでなければできないことを大切にしたいと思っています。僕の作品を観た人から、「これだけ現実の東京を忠実に描くのなら実写でもいいのでは?」とよく言われるのですが……。僕の見解では、たとえ実写にできたとしても、上映時間が2倍以上になってしまうでしょう。実写では、たとえば瞬きを何度するのかは役者の生理的な感覚に委ねられます。一方、アニメでは1秒間を24分割して、何コマ目に瞬きをすると決めることができる。細かいパズルを組み立てるようにして作っていけば、限られた尺のなかで不自然な流れになることなく、語れることの密度を高めることができるのです。
それから実写にすると、おそらく感動は半分になってしまうと思います。リアルに描いているとはいえ、光や影の演出はアニメならではのもの。観客を美術の美しさでハッとさせ、ダイナミックな世界観へと誘うのがアニメーションの醍醐味だというのが持論です。
デビュー当初は一人で制作していましたが、現在は作品ごとに作画監督、美術監督などで構成されたチームを組んで制作を行っています。僕の限界が作品の限界ではなくなったというか、各分野のスペシャリストの力を借りて可能性がグンと広がったのを感じます。さらに僕の作品に欠かせないのが音楽です。前作に引き続き、今回もRADWIMPSが音楽全般を担当してくれました。
『天気の子』を観た方々からの感想は、本当に楽しみなんですよ。僕はまた何かしら新たな体験をするでしょう。そのことが次に手掛ける作品へとつながっていけばいいなと思っています。