負けたからここにおるねんで
第1工場から順に立席して歌います。
まずはリーダーが合唱する歌を選んだ理由を述べ、歌いはじめます。
元気がいいのは当たり前。皆さん抑揚を付け、表情豊かに楽しそうな歌声です。
私が子どもの頃に学校で聞いた保護者たちの「ママさんコーラス」より若々しく、初々しく歌声は響きました。
ほとんどカラオケには行かない私ですが、歌うことが笑顔を呼ぶのか、笑顔が歌声を良くするのか、とても気分のいい合唱大会がはじまりました。
私は1曲、歌い終わるごとに寸評を入れる役割です。
第1工場の選曲は「宙船(そらふね)」でした。作詞・作曲は中島みゆき。この曲はTOKIOの長瀬智也が主人公だったテレビドラマの主題歌です。
私の寸評は「歌い方は男っぽかったぞ! みんなは中島みゆきの楽曲じゃなくってTOKIOを頭に置いて歌ったな!」なんて返しました。
そして4番目の工場の選曲はZARDの「負けないで」でした。
ここは失礼でしたが、曲紹介の時点で笑ってしまいました。そこは許してください。しっかり声も出ていて、コーラスもバッチリ合っていましたので私の寸評は「選曲がサイコーです。歌詞から伝わる、最後まで諦めずに頑張ろうという思いには感動しました」と評しました。
その工場のメンバーはその寸評を喜んでくれたようでしたが、さすがの私もひとこと加えました。
「いま『負けないで』を歌いましたけど、みんな、負けたからここにおるねんで!」のコメントで会場は他の工場の人たちも含めてみんなで大爆笑。
そこでもうひとこと。「他の工場の人もみんな、負けたからここにおるねんで! 頼むからもう二度とここには来ないでください!」と訴えました。
ここで生まれた笑いは「魔力」とも言えます。この日は、それで和んだ空気のまま最後まで進みました。