1人審査委員長

舞台を客席から見ますと、上手(かみて) (客席から見て舞台の右側)にある長机の審査員席には名ビラ(寄席用語で言うと「めくり」。その人の名前などを書いたもの)が1枚だけしか貼られておりません。それも私の名前だけです。「1人審査委員長って、これいかに?」という気持ちです。

そこで今回、声を掛けてくださった張本人、この施設の部長に舞台袖で聞きました。

『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記 』(著:竹中功/KADOKAWA)

「審査員は私1人でしょうか?」と問いかけると部長は嬉しそうです。

「ハイ、1人審査員をやってください!」とひとこと。

いきなり部長の司会で始まりました。

「今日は元吉本興業の専務だった竹中さんが審査委員長です。思いっきり歌いましょう。楽しみましょう!」と紹介されたのち、私は壇上に駆け上がりました。

こういう時のリズムって大切なので、舞台で一度こけようかとは思ったのですが、ここでスベったらその後が巻き返せないような気がしましたので、それはやめつつも、ウキウキ感満タンで舞台に上がりました。それだけで拍手の嵐です。

「そんなに拍手をしたところで私は審査員ですよ! 面白くはないですよ」と私はマイクを通して言ったのですが、もうそんなのも聞かず、始まる前からものすごく盛り上がっていました。部長の前説のせいですね。