平和と平等
基調報告をした市川は、このとき後に残る名台詞を口にしている。
「平和なくして平等なし、平等なくして平和なし」
この前後の講演をもう少し紹介したい。女性をとりまく社会状況について簡単に述べたいと前置きをしたのちに、こう語っている。
国連婦人年の10年前半は、強力なキャンペーン、政府、自治体、民間活動により「男女平等への社会的風潮はいくぶん広がった」とする。生活面では高度成長により最低の貧しさからはある程度解放されたものの、急速な経済成長のひずみが出ている。
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婦人労働者はこういう状況の中で増大しておりますが、パートタイマーの婦人が増えていることは婦人の働く権利、社会参加を手放しで喜べないような低賃金、労働条件の切り下げにつながっています。
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こう述べた上で、海外情勢に目を向ける。
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一方、中近東の戦争による国際緊張、カンボジアをはじめとする難民の問題、そして未開発のための貧困、人種差別などが国際社会の大問題であり、平和の達成と貧しさからの解放なくして婦人の地位向上などはあり得ないということが理解されるのであります。
こうした国際緊張のなかで日本の役割はどうあるべきでしょうか。日本国憲法によって戦争を放棄し国際平和に貢献すべきことを規定してはいますが、このところ、軍備増強をめぐり改憲論議など、戦争へのきなくさいにおいが漂っております。
平和なくして平等なく、平等なくして平和はない―私ども婦人は、このことを心に銘記して後半期に取り組むべきと思います。
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