内閣府が発表した令和4年版高齢社会白書によると、65歳以上のひとり暮らしの割合は増加傾向にあり、昭和55年には男性 4.3%、女性 11.2%でしたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%に。終活の一環として、生前整理を考えている方も少なくないのでは。それでも、思い出が詰まったものは、どんなに古くなっても色あせても愛おしくて、やすやすとは手放せないもの。島村優子さん(仮名・福岡県・無職・71歳)は、幼いころから溜め込み魔で、ものが捨てられなかったそうで――。
納豆の包みに、旅のパンフレット
私には、幼い頃から変なものを溜め込むクセがあった。亡き祖母や母から、よく笑われたものである。好きだから、興味が湧くから、つい収集してしまう。その1つが、納豆の袋だ。幼い頃の私にとって納豆ご飯は最高のごちそうで、それは今も変わらない。
当時の納豆は、今のようにトレーには入っておらず、経木に包まれた三角形のものだった。その包みを押し入れに溜め込んでいたのだ。祖母と母がそれを見つけた時は、「変な子だね」と呆れ顔で言われた。
なぜそんなものを集めていたのか、今となっては思い出せないが、好きな食べ物の残り香に包まれたかったのかもしれない。
20代前半になると、京都に憧れ夢中になった。バイトで旅費を貯め、春秋2回、5年ほど続けて京都を訪れた。レディスホテルを定宿とし、朝から夕方まで寺社や庭園、史跡と観光スポットを巡る。
その都度もらったり、買ったりしたパンフレットは、大事に持ち帰り保管。母から、「いいかげん整理して、処分しなさいよ」と言われていたが、青春の楽しき思い出が詰まった品だけに簡単には捨てられない。結局、今も棚の上にうずたかく積まれたままだ。
その後、40代になると、地元・福岡の歴史を勉強したいと、歴史サークルに入会。月1回、開催される講演と史跡探訪に通った。史跡探訪では、藩主・黒田家のルーツを訪ねて岡山の備前福岡を旅したり、毛利元就の足跡を辿って安芸の宮島に出かけたり。吉野ヶ里遺跡の発掘間もない現場を見学したり、西郷どんの故郷・鹿児島まで足を延ばしたりしたこともある。