『婦人公論』2004年12月22日・2005年1月7日合併特大号より

お世辞、おべんちゃらは厳禁

番組がスタジオ収録だったので、私がじかに小さいひとたちと接するようになったのは、もう40歳を過ぎたころでしたけど、私にとって彼らと仲良くなるのはごく自然なことでした。それを特別のことと考えたことはなかった。

それがある日、後に佐世保市の教育長となった方から講演を依頼されたとき、「私は何十年と教職に就いているけれど、子どもたちとやり取りしているあなたを見ていると、とてもかなわないと思う。あなたはどうしてそんなに子どもとうまくつき合えるのか」と尋ねられたんです。

私はずいぶん長いこと考えました。そして出てきた答えが、「私はお世辞を言わないし、おべんちやらも言わない。話すときは丁寧に話している」ということでした。実際、私は名前を聞くときでも、「君の名前は?」なんて聞きません。ちゃんと「失礼ですが、あなたのお名前はなんとおっしゃるんですか」と聞きます。

ただし、それは意識してのことではなく、自然に礼儀正しくなるんです。で、私がなぜそういう態度を取るのかと考えたら、「傲慢な大人にはなりたくない」という思いがあることがわかったんです。

お話ししたように、私はとても鋭くて、賢い子どもでしたでしょ?大人の傲慢さやずるさに何度も何度も傷つけられてきたんです。少し前に『五歳の記憶 ノッポ流子どもとのつき合い方』という本を出しまして、そこにも詳しく書いてあります。