尊敬すべき方が敬愛している尊徳、
どのような人なのか
戦争が終わると、戦前のすべてのことに対してあまりいい感情を抱けなくなったのは、私だけではないと思います。二宮尊徳に対してもしかり。「歩きながら本を読んだら転んじゃうわよね」などと、憎まれ口をきいたりしたものです。
「勤勉であれ」「親孝行せよ」という道徳の教えとセットとなって記憶されていることも、尊徳さんにとって分が悪いというか――戦争が終わってほっとして、もう少し自由で享楽的に生きたいという気持ちもあった時代です。なんだか古くさく、説教くさい感じがして、「尊徳さん、そんなに出てこないでよ」と、煙たく思う気持ちもありました。
ところが、全国大会の共催者でもある社会福祉法人小田原福祉会の理事長・時田佳代子さんをはじめ、参加された市民のみなさんは尊徳を尊敬し誇りに思っていました。2022年に94歳で亡くなられた同法人の会長・時田純さんは、「介護で市民を困らせない」「人は人として存在するだけで尊い」という理念のもと、すばらしい高齢者福祉事業を実践なさっていた方。大会では、潤生園という高齢者施設の見学プログラムもあったので、私も同行、その運営のすばらしさに大感激したのです。
そんな尊敬すべき方が敬愛している尊徳とは、本当のところどのような人なのか。共催するからにはきちんと知るのが礼儀だろうと思い、尊徳に関する本を3、4冊買って読むことにしました。