満開のエゾムラサキツツジ。葉が出る前に、春に先駆けて咲く

昔の盆栽のよさを今の時代に

では山本さんはどのようにして、独特の手法を編み出したのか。その原点は祖父にあるという。

小さい頃から、父の手伝いで毎日のように祖父が作出した盆栽に水やりをしていた山本さん。祖父がつくっていたのは、明治・大正時代に好まれた、極力針金を掛けずに仕立てる瀟洒なたたずまいの盆栽だった。

三代目の父は10年間戦地に送られた影響もあり、戻ってからも身体の調子がよくはなかった。山本さんには弟が2人いたが、ともに聴覚障害があり、1人は早逝。姉も継がなかったので、ごく自然な流れで、跡継ぎになるべく、地元の園芸高校に進学した。

「父親から『一応、針金掛けも覚えたほうがいい』と言われて、高校時代、夏休みを利用して盆栽の一大産地である大宮(埼玉県)で勉強したこともあります。でも、やっぱり自分の感覚には合いませんでした」

花が可憐な鈴梨。年月を感じさせる風格のある枝と、みずみずしい花の対比が美しい