がんは、人に言えないことじゃない
西 私は乳がんになったことを、家族はもちろん、カナダの友人たちにも日本にいる友人たちにも伝えました。がんになることは悪いことでも恥ずかしいことでもないし、普通のことです。それに、みんなに「とにかく検査を受けて」と言いたかった。
でも結局、助けられたのは私でした。抗がん剤治療中、友人が、ミールトレインというシステムを使って、交代で食事を届けに来てくれたんです。でも、抗がん剤治療中でも、調子がよくて普通に日常が送れる日もあるんです。そんな日は申し訳なくて、「今日は自分で料理できるよ」と伝えたら、「調子がいいときは、加奈子がしたいことをすればいい。ゆっくり本を読んでも、海を眺めてぼんやりしてもいいし」って。何度思い出しても涙が出ます。
逆に、どうしても体に力が入らなくてベッドから出られない日もあって。そんなときはさりげなく子連れで来て、ウチの子と遊んでくれたり。こんなにありがたいことってなかった。
高尾 いまや2人に1人はがんになる時代。がんは人に言えないことじゃない。私は幼いころ、よく子どもキャンプに行っていたのですが、小学4年生の夏休みに突然母に、「1ヵ月のロングキャンプに行ってみない?」と言われ、大喜びで参加しました。
母は例年通りバス停に見送りに来て、帰りも迎えてくれた。その夜、お風呂で母の胸に手術痕を見つけて、キャンプの間に、入院して乳がんの手術をしたと聞いたのです。親心ゆえだったのですが、やっぱりショックでした。母が病気になったのはもちろんだけど、私だけ知らされなかったことが。
そのとき、私は信頼される人間になろう! と強く思ったのを覚えています。「がん=死」のイメージが強かった時代の話ですけどね。