「あえて手放そうとしなくても、捨てるべきモノは自分から消えていく。だから、そんなにムキになって減らそうとしなくてもいいのではないでしょうか」(撮影:大河内禎)
90歳になった作家の五木寛之さんは、「捨てない生き方」を提唱しています。大量生産・大量消費の時代に抗いながら、モノと語り合う大切さとは。
(構成=平林理恵 撮影=大河内禎)

70年代に作ったズボンを愛用

コロナ禍の影響もあるのか、ここ数年、断捨離ブームが再燃しているように思います。テレビや雑誌で「いらないモノを手放して、スッキリ暮らそう」といった特集が組まれることも多く、モノをいっぱい持っている人たちが、誰かに急かされるように捨てることに熱意を燃やしていたりする。

でも、これがなかなか減ってはくれない。それがプレッシャーになり、「できない自分」を責めてしまう人も少なくありません。

そんな人に、お伝えしたいことがあります。それは、「捨てない生き方」も案外悪くないものだ、ということ。僕自身、モノを減らそうと思うことはほとんどなくて、ありとあらゆる雑多なモノと暮らしています。

「捨てない」というのは、大量生産・大量消費を前提とする資本主義には明らかに反する態度です。廃棄に回さなければ、生産→消費→廃棄という原則は崩れてしまう。

以前は、このまま生きていくと増えすぎて大変なことになるかも、と思っていました。でも無闇に増えることはないものです。あえて手放そうとしなくても、捨てるべきモノは自分から消えていく。だから、そんなにムキになって減らそうとしなくてもいいのではないでしょうか。