「伝統的家族観」は明治以降のかたち

大塚 大奥といえば、ドラマ『大奥』が話題になりました。将軍が女性で、大奥は男性ばかり。男女を逆転させることで、当時の大奥のシステムがいかにへんてこりんだったかが浮彫りになっていて、面白く見ていました。

平安時代の文学にも、トランスジェンダーと思われるきょうだい(仮に兄妹とします)が主人公の『とりかへばや物語』という作品があります。心の性に従って、兄は《姫君》として出仕し、女性ばかりの職場の長官に。妹は《若君》として出世し、右大臣の娘と結婚する。それぞれの立場を取りかえた顛末記です。

本郷 確かに立場を入れ替えると、それまで見えなかったものが見えてくるでしょうね。

大塚 ここ数年議論されている選択的夫婦別姓制度の件も、立場を入れ替えて考えることで男性も実感してほしいです。結婚や離婚のたびに姓が変わることがどれほど不便かつ大変か……。

本郷 どんな場面で大変なんですか?

大塚 えっ(笑)!? 銀行の口座や車の名義、パスポートなど、すべて変えなくてはいけない。会社を経営している方は、登記の手続きなども必要でしょう。仕事をしながら平日の日中に煩瑣な手続きに追われることの大変さと虚しさたるや、大変なものではないでしょうか。