ジェンダーフリーの時代を叶えるには

大塚 先ほど本郷さんのおっしゃった、「古代に女性が首長だった頃は戦いが少なかったのではないか」というお話は、興味深いです。戦乱の世だったり対外的な戦争が起きたりすると、肉体的に勝る男の地位が高くなりがちですから。

そして平和になると、女性の地位がまただんだん高くなる。ただ、今みたいにきな臭い世の中になってくると、また男性優位に逆戻りしかねません。

本郷 男は頭でわかっているつもりでも、実感として理解していないことが多いのは事実です。だから、ちゃんと指摘してほしい。ただ言えるのは、僕は60年ちょっと生きてきましたが、ジェンダーや性的少数者の問題に関しては、だんだんよい方向に向かっているのは確かだと思います。今の20代、30代は、確実に考え方が変わってきていますから。

大塚 私もそう思います。もともと日本には、よい意味でのゆるさ、性の境界のあいまいさがありました。この先、ジェンダーについての自由な考え方が後退しないことを切に祈りたいですね。


大塚ひかりさん、本郷和人さんがひもとく日本の歴史

ジェンダーレスの日本史-古典で知る驚きの性
大塚ひかり:著
定価:990円(税込)/中央公論新社刊

日本の古典文学には、男女の境があいまいな話が数多く存在している。一族を養う姫、号泣する武士─など“伝統的”とされる男らしさ・女らしさのウソを、太古の神話から平安文学、軍記もの、江戸川柳を通して解き明かす
「将軍」の日本史
本郷和人:著
定価:946円(税込)/中央公論新社刊

将軍は、源頼朝や徳川家康のように権威や権力を兼ね備えた人物ばかりではなかった。くじ引きで選ばれた、子どもが50人もいた、何もしなかったなど、個性豊かな将軍像を通して、日本の権力構造の謎に迫る