「わからない絵」で栄光につつまれる

その難解さ、奇妙さから「ピカソ」は「わからない絵」の代名詞でもあります。

『ピカソの言葉――勝つためでなく、負けないために闘う』(著:山口路子/大和書房)

その「わからない絵」は時代も味方して早くから認められ、ピカソは若くして富と名声を手にします。

生前は認められなくて死後にようやく、といった画家が多いなかピカソは違いました。

美術史上ピカソほど生前にお金を稼いだ画家はいません。

「わたしがふれるものすべてが黄金になる」と言っていますが、これはほんとうで、たとえばレストランでナプキンにちょっと落書きするだけで大人数の食事代が支払えたし、数日で描きあげた絵で家を買うこともできたし、ある本にちょこっとデッサンを描けば、その本はその瞬間、高価な美術品となったのです。

有名になりすぎるほどに有名になって、計算不能なほどの富を得ても、ピカソはとにかく描き続けました。

美術史上ピカソほど多くの作品を創作した画家もいません。約1万3500点の絵とデッサン、それ以外の版画や彫刻、陶器は約13万点。もっとも多作な画家としてギネスに認定されています。

作品の人気はピカソの死から半世紀が経った現在もまったく衰(おとろ)えず、驚くほどの高値で取引されています。記録的な高額で落札された近例としては2015年の『アルジェの女たち』があります。約1億7900万ドル(約215億円)でした。