ピカソが全部やってしまった!
戦後アメリカ美術界のスター、ジャクソン・ポロックの伝記映画があります。彼が新しい表現方法を模索しているなか、絶望にまみれた声で叫ぶのです。
「ピカソが全部やってしまった!」
美術界においてピカソが何をしたのか、専門的なことはわからなくても、何かすごいことを成し遂げたのだな、ということが伝わってきます。
この叫びは「ピカソ以後の画家」共通の嘆きでもあります。
岡本太郎も言っています。
「ピカソの破壊こそは彼によって始まり、彼によって鎖(とざ)してしまう。彼そのものが完成品なのである。……ピカソのみ輝いている。まわりは全部闇である。そしてその闇の中にわれわれは立たされているのだ。われわれは虚無を乗り越えて行かなければならない絶望的な課題に直面しているのである」
ピカソを乗り越えなければならないが、それは絶望的なほどに難しい、ということ。
誰もしたことがない自分だけの表現を目指す画家にとって、ピカソは彼らの夢をあらかじめ打ち砕いてしまうような、それほどのことを、ありとあらゆることを、たったひとりで成してしまったのです。