インスピレーションの源(みなもと)はミューズたち

芸術家にインスピレーションを与え創作の原動力となる女性を「ミューズ(美神)」と呼びますが、ピカソには生涯で十数人のミューズがいました。そこまでの関係ではない女性を入れれば数えきれません。

同じ人が描いたとは思えないほど変幻自在に画風を変えたことから「カメレオンのよう」と言われるピカソですが、「女性が変わるたびに画風が変わった画家」としても知られています。

「わたしは恋愛の情にかられて仕事をする」とピカソは言いました。恋愛がもたらすありとあらゆる感情をエネルギー源にしていたピカソは、とても情熱的であり、その情熱で女性を虜にし、そして次々と新しい女性を求め続けました。

その情熱ゆえ、ひとりの女性に溺れることを警戒していたところもあります。若いころ親友が失恋のため自殺をし、その事件のショックは大きく、自分は絶対に恋愛に溺れない、女性に振り回されないと決意したのです。

妻や愛人たちが自分への愛ゆえに傷つく姿を愛の証拠としていて、そんなピカソをサディスト、破壊者、最低の男、と非難する人も少なくありません。

けれど、彼女たちは誰ひとりとして、ピカソから離れようとはしませんでした。それどころか、どんなに泣かされようと苦しめられようと「ピカソからほんとうに愛されているのは私だけ」「ピカソを理解できるのは私だけ」と言っています。

ひとりの男性としてのピカソは、けっして「いいひと」ではないけれど、暴力的なまでに魅力的でした。