遺伝的多様性の低下

面白い例がハルーワスウィートを母に持つ3頭のGI馬。

父がディープインパクトのヴィルシーナとヴィブロスは、ジェンティルドンナやアーモンドアイと同じく父は遺伝子型EEの鹿毛に母は栗毛なので、まったく栗毛は現れないパターンだったのですが、父がハーツクライ(遺伝子型Eeの鹿毛)となったシュヴァルグランは栗毛です。

一部の種牡馬への人気集中は、その子孫間における近親交配の増加を伴い、結果としてそれは遺伝的多様性の低下をもたらします(写真提供:Photo AC)

このように、一部の種牡馬にあまりに人気が集中すると、毛色の割合にも見て取れるように、その生物集団の形質が偏ります。

一部の種牡馬への人気集中は、その子孫間における近親交配の増加を伴い、結果としてそれは遺伝的多様性の低下をもたらします。

以下は、環境省自然環境局の一機関である生物多様性センターのウェブサイト中の「遺伝的多様性とは何か」というページ(https://www.biodic.go.jp/reports2/parts/5th/5_gdiv/5_gdiv_02.pdf)からの抜粋です。

「生物の保全を行う上では、特に『遺伝子の個性の減少』が問題になることがわかってきました。『遺伝子の個性の減少』した(=遺伝的多様性が低い)集団では、伝染病・害虫などに抵抗性を持つ遺伝子が失われ、すべての個体が同じ病気にかかったりします。

また、仔の死亡率が高まり、繁殖の成功率が低下したりします。この現象は、近交弱勢(きんこうじゃくせい)とよばれていますが、その原因は遺伝的多様性の低下により、集団から遺伝子が失われることにあります」