年をとることが嫌ではなくなっている

20代前半ごろまでは、誕生日が来るのが嫌だった。年をとることに漠然とした不安があったのだ。何もしていない、若さを謳歌していないのに、年齢だけは有無を言わさず加算されていく。だからお祝いと言われても、何がめでたいんだ、とずっと思っていた。
ある取材で、年下の取材対象者が、「私、はやく年とりたいんですよ」と言ったことがあった。「若い」のど真ん中にいて、どんどん夢を叶えていく最中のその人からそんな言葉が出てきて、少々面食らった。

でも、私も今はその気持ちがわかる。年をとることが嫌ではなくなっている自分に気が付いたのだ。
とはいっても、元々若さにそこまで執着はなかったように思う。若さを享受したことなんてない。学生時代は毎日が辛くて死にそうだったし、青春なんて一番縁遠かった。今しかできないこと、若者が経験すべきこと、そういった一般的な若者のコースからは早いうちから離脱した。若いうちしかできないことを逃さない、なんてことはとっくに諦めている。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

社会人になって、関わるのは圧倒的に40代以上だ。職場によるだろうが、同世代は絶滅したのかと思うほど、平均年齢の高い職場ばかりだったからかもしれない。今連載している媒体もミドル世代向け、この『婦人公論.jp』も親世代くらいがターゲットの媒体だ。
私はその中で、「素敵なミドル」にたくさん出会った。素敵なミドルは、なんといっても、20年以上のキャリアに裏打ちされた知識と余裕がある。

20代と言えば、社会人歴なんてたかが数年。まだまだ社会のことなんて分からないし、ミスをすれば慌てふためき、先方の一挙手一投足に怯え、顔色を伺ったりする。でもミドルは違う。多少のことでは動揺しないし、私が慌てると、「こうすれば大丈夫」「みんなそんなものだよ」と言ってくれる。基本的に大きく構えているのだ。
そして素敵なミドルは人に頼るのが上手い。色んなスタッフの得手不得手や性格を見極めて仕事を振るし、要求は遠慮なく、でも相手に敬意を持って伝える。外部の人にもよく連絡して、情報収集も抜かりない。