●ピカソの言葉

彼女はわたしの唯一の女友達だ。

唯一の女友達

彼女とは、ガートルード・スタイン。たいていの女性は恋愛相手にしか見えないピカソにとって女友達は貴重。彼女のことを「唯一の女友達」と言う理由は、ガートルードは同性愛者であったこともあり、ピカソにとって彼女は対象外だったこと、自分と拮抗するエネルギーをもっていると認めていたことがあるでしょう。

『ピカソの言葉――勝つためでなく、負けないために闘う』(著:山口路子/大和書房)

ガートルードとその兄はアメリカからやってきたコレクターであり、ピカソが世に認められる以前にピカソの才能を見出し、作品を購入しました。ガートルードのサロンには芸術家が集い、そこでの交流が芸術家たちに与えた影響は大きなものでした。

ピカソはガートルードの肖像画を描いています。有名な作品です。当時は「まったく似ていない」肖像画として評判でしたが、ピカソは「いまに彼女のほうが絵に似てくるよ」と言い、ガートルードはのちに書いています。「ピカソは私を一度も見ずに私の顔を描いた。……私にとってつねに自分を再現してくれるのはその絵だけだ」。

晩年まで交流は続きました。ガートルードはピカソについて多くのことを書き残していますが、その一つ。

「ピカソはいつだって、自分の内なるものをすべて発散させずにはいられなかった。そして、自分が空っぽになるまで活動するために、強い刺激を求め続けた」