絵本との出会い方と選び方

山口 昨年、書店で手に取って衝撃を受けた絵本『もうじきたべられるぼく』の作者のはせがわゆうじさんにお会いすることができたんです。絵のタッチも可愛らしくて素敵なのに、ストーリーは考えさせられるもので、命について学ばせていただくという、これまで出会ったことのなかった絵本です。

磯崎 『もうじきたべられるぼく』は、まずこのタイトルが印象的ですよね。母に対するぼくの行動がすごく心に残りましたし、食育ということだけではなく、母子の関係をていねいに描くことで、誰かの心を動かすことができるのかなと思います。もえさんがこの絵本に出会ってパーっと世界が広がる感じを体験されたとおっしゃっていましたよね、それが絵本選びの楽しみにつながっていると思います。

山口 だから本当に、自分が「よし」と思う絵本のハードル上がっちゃいましたよ。

磯崎 自分の中にビビッとくる基準ができたんじゃないかと思います(笑)。

山口 そうなんです(笑)。この記事を読んでくださっている方にも、そういうビビッとくる絵本との出会いがあったらいいな。

磯崎 好きな絵本が見つかったら、すごく幸せですよね。時々、絵本の選び方に迷ってしまう方もいるようで、親が子どもに絵本を読む時にまずぶつかる壁が、読んでみたけど反応がない時。そこで「絵本が好きじゃないのかな?」と、読むのをやめてしまう方もいて。でも、読んであげるのが6歳ぐらいまでと考えると、6年間しかない貴重な時期に大人のほうの考えでつまずいてしまって、たとえば2年間読まなかっただけであと4年しかないと思うと、やっぱりもったいないなって思うんですよね。

絵本を読む最初のタイミングが0歳の赤ちゃんの頃ですが、反応が薄いんです。一生懸命読んでいても、意味があるのかな、ないのかなというところで落ち込む方も。そんな時は、赤ちゃんの立場になって考える。視界がまだぼんやりしているけれど、耳は聞こえているから、言葉は聞こえているんだろうな、という風に。だから、ページをめくった時に色が変わると、ちょっと反応したりする。この反応の違いを「喜んでいるかも」ととらえてみるとか。0歳から1歳にかけてどんどん変化していくので、昨日は全然駄目だったけど今日は手を伸ばした、と観察する癖をつけていくと、見えてくることがあると思うんです。すると、絵本選びも楽しくなってきて、迷うこともなくなってきます。

山口 うちも0歳の頃に絵本を読んだ記憶がなくて、たぶん絵本はあったはずなんですが、しっかり読み聞かせてはいないんです。でも、押せば飛び出る絵本や人形がついていてウサギが動く絵本などをお祝いでいただいたり、書店で見つけて手に取ったりしていました。磯崎さんの『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)を読ませていただくと、どんな絵本を読んだらいいかわからない方には、選び方がわかりやすくていいですよね。何歳にはこんな本がおすすめですよ、と書いてあるから、絵本選びに悩む方は参考になるはずです。

どんな絵本を読んだらいいかわからない方に磯崎さんの『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』はおすすめ(ほるぷ出版)(撮影◎本社・奥西義和)

磯崎 ありがとうございます。子どもがうまれて、絵本を読まなきゃと思うと追い詰められる方もいるかもしれないんですが、実は大人だって絵本をよく読んでみると面白いんですよね。だから、子どもだけではなく、大人も絵本を楽しんでほしいなと思います。