子どもの思い出は絵本そのもの
磯崎 私たちの世代が、子どもの頃に教わってこなかったことってたくさんあって。海外の人との付き合い方や性の話、隣にいる知らない人とどう向き合えばいいかというようなことは、わかっているつもりでもやっぱりわかっていないので、アップデートしていかなきゃいけないなと。今の絵本は、そういった多様な価値観をどんどん取り入れているんです。それを読んだ時に、子どもと同じぐらい大人も驚くと思います。なるほど、こうやって理解していくんだなと実感するので、絵本の存在はやっぱり大きい。
子どもが小学生ぐらいになってくると、私はほとんど大人と対等だと思っているんです。絵本を小学生が読んだ感想と、大人が読んだ感想では、同じぐらいそれぞれに価値がある。そんなことを実感させてくれる絵本もたくさん出ていて、感銘を受けることが多いです。だから、小学生になっても親子で一緒に絵本を読み続けて欲しいですね。
山口 私が思う絵本のすごさは、とても種類が豊富なところです。まず、いろんなサイズが出ているので、本屋さん泣かせだなと(笑)。全部の絵本が同じサイズになったら書店の棚に並べやすいのに、大きいものや小さいものがあって。でも、私はそこが絵本の良さであり、魅力だと感じています。一冊ごとに紙の質感も違いますし、ページを開いていく感覚も違いますし。
ただ見るだけではなく、子どもが絵を描いてしまった、それこそ舐めてしまったというような跡もすべて思い出として残せるのが、絵本の素晴らしさですよね。なので、絵本は子どもが大人になっても、ずっと取っておいてあげてほしいなって。ページに書いた落書きすらも愛おしくなる日が来ると思いますし、「シールいっぱい貼っちゃったよ」というようなことがあっても、それも子どもの思い出として取っておけるから。
磯崎 私が編集長をしている絵本の情報サイト「絵本ナビ」では“ボロボロ絵本コンテスト”という企画をやったことがあるんです。ビリビリになって何回もテープで貼った絵本を自慢してくださいという(笑)。ボロボロになればなるほど、それはもうすごく読まれて定番になったことの証しで、その子の思い出として残るわけです。
山口 思い出が詰まった絵本がたくさんありそうですね。