子どもたちが初めて出会う本でもあり、親の子ども時代の思い出の中にもある絵本は、誰にとっても親しみやすい友達のような存在。3児のママでもあるタレントの山口もえさんは、昨年、はせがわゆうじさんの絵本『もうじきたべられるぼく』と運命の出会いを果たした時の思いを以前「婦人公論. jp」で語ってくれました。今回は、そんな山口さんと、絵本情報サイト『絵本ナビ』編集長の磯崎園子さんが、絵本の魅力を語ってくれました。
(構成=かわむらあみり 撮影=本社・奥西義和)
『ノンタン』シリーズなどが絵本の原体験
山口 私が子どもの頃にお気に入りだった絵本は『ぐりとぐら』や「ノンタン」シリーズ、『バーバパパ』の絵本です。絵本の世界に入り込んで、想像することが好きでした。とくに『ぐりとぐら』は、ホットケーキをみんなで食べる場面があって、自分がぐりとぐらのサイズになって一緒に食べている様子を思い浮かべていましたね。(笑)
磯崎 そういう人それぞれお持ちの絵本の記憶を聞くのが好きです(笑)。私は田舎育ちでまわりに書店があまりなかったんですが、おそらく親が専門店に絵本を買いに行ってくれていたのかなと。「うさこちゃんの絵本」シリーズ(ミッフィー)や「ノンタン」シリーズは、繰り返し読んでいました。親に読んでもらうというよりも、兄が読んだ絵本を私も眺めていたという感じで、あとは描き写したりして。
山口 絵本を描き写すなんて、すごい。
磯崎 いえいえ、でも今も覚えているのは、やっぱりよく絵を見ていたんだなと。どの絵本もストーリーまでは覚えていないんですが、書店に並んでいる絵本を見た時に「なんかこれ覚えているなあ」と、ふと立ち止まるといいますか。大人になって、書店で働いていた時に、「こうやって絵本の記憶が残っていくんだ」と実感しました。
山口 私も子どもが産まれて、書店で『いないいないばあ』を見て、「なんか見たことのある絵だ」と思い出して。
磯崎 あのシリーズは記憶している方が多いですね。山口さんと比較的近い世代と思うのですが、私たちの幼少期は、たくさんの画家やイラストレーターの方が、絵本というジャンルに取り組まれていたり、さまざま国の翻訳絵本が出版されたり。絵本の黄金期と言われる時代だったんだと思います。今でも読み継がれる絵本は、あの頃に生まれたものが多くて、私たちが読んでいた絵本は今もわりと残っているんですよ。今は昔よりも数多くの絵本が出ていますね、毎月100冊以上も。
山口 100冊! すごくたくさん出ているんですね。
磯崎 はい。しかも、ひたすら笑える絵本やデザインがすごくきれいなもの、ちょっと怖いものなど、様々なテーマの絵本が出ています。一方で、ちょっと意外性のある絵本も繰り返し読まれて定番になったりもしているんです。
山口 意外性といえば、子どもの頃に『ウォーリーをさがせ!』が出てきた時には衝撃を受けました。「え? ウォーリーを探すだけなの、この絵本!?」みたいな(笑)。こんな絵本もあるんだという驚きが新鮮で覚えていますし、飛び出す絵本も衝撃的で今でも忘れられないですね。
磯崎 そうですよね、仕掛け絵本も探し絵本も、今はすごく進化していて、いろいろな種類がありますね。
山口 私は『ウォーリーをさがせ!』や『きんぎょがにげた』に衝撃を受けて、何回も読んだんです。今は親になって、子どもも何回も読んでいて、どこにウォーリーがいるのかも覚えています。初めて家に子どもの友達がやってきた時に、その絵本を一緒に見ながら、友達に「ここ!」って教えて「すごい!」と言われていたり。そういったことも含めて、絵本は子ども同士や親子のコミュニケーションにとてもいいです。
磯崎 『きんぎょがにげた』はずっと人気がありますし、1歳や2歳の子どもでも自分で探そうとします。その時期の子どもの絵本の楽しみ方がわかりますよね。