「わかってもらえないんやったら本出すのやめる」

本を書くにあたって僕が一番神経を使ったのは、息子のこと。彼らにとって、普通は世間に隠しておきたいような出来事もあったけど、それをあえて書きました。だから、たたきの段階から息子たちには直接会いに行って、原稿を見てもらったんです。息子たちには「これ書いてほしくないようだったら本はもう出さなくてええから」と伝えました。息子たちのことを本に書くことは、ある意味、犠牲になってもらうことだとわかっています。でも『居場所。』っていう題名の本を書く以上、居場所を見失いそうになった息子と僕の話を省くわけにはいかなかった。息子たちの人生には浮き沈みがありましたけど今は元気になって、父親になり、立派に仕事をしています。今、居場所がないと感じている子どもたち、それを心配して心を痛めてるお母さんたちにこそ、僕の本を読んで欲しいと思っていましたから。

今のところ『居場所。』を手に取って下さるのはおじさん方が多いみたいなんですけど、最初に言ったように、これは出世するための本ではなく、今、行き詰まっている人に読んで欲しい本。死にたくても、居場所がなくても、生きていたら必ず何か見つかりますから。昨今、学校に行っていないお子さんたちが増えていますよね。僕は、多くの子どもたちが学校行けないのは、不思議なことではないと思っています。

「失われた20年」とか言われて久しく、若い人には「昨日より今日、今日より明日は、もっと楽しくて幸せで金持ちになっていく」という感覚がない。そこに震災やらコロナが舞い込んできました。おまけに同じ学校に入れられた生徒というものが、みんな同じものを見て同じスピードで同じ時間内に授業受けなきゃいけないってこと自体、上手くいかなくて当たり前と思います。地域創生をプロデュースしている清水義次さんという方が、義務教育の形を変えることを提唱しています。主要5科目(英語、数学、国語、理科、社会)はネットで選んだ先生の授業をそれぞれがリモートで習得し、それよりずっと多くの時間、自然の中で、集団で経験を共にして学んでいくという学校活動。僕もそんな教育スタイルが近い将来実現されるといいなと思うんです。

多くの子どもたちが学校行けないのは、不思議なことではないと思っています。(撮影:米田育広)