エッセイ『居場所。』を3月に上梓した大崎洋さん(撮影:米田育広)
「3人目のダウンタウン」と称されることもある吉本興業HD・大崎洋会長。4月27日付けで会長職を辞したと報じられた。その後5月17日には、2025年に開催予定の「大阪・関西万博」の催事検討会議委員の要職・共同座長に就任することが発表された。3月に上梓したエッセイ『居場所。』では、若きダウンタウンとの日々、2007年のお家騒動、2019年の闇営業の顛末、家族のことなど、初めて自らに赤裸々に語っています。出版に至った経緯や、その反響、心境の変化などについて聞きました。(構成◎岡宗真由子 撮影◎米田育広)           *崎はたつさきです

男の嫉妬ってほんま最悪やなって思うんです

この本は、自分のことを引き合いに、「会社員人生成功の秘訣」を書いたつもりはありません。ただ、サラリーマンとして僕が直面し、乗り越えたいくつかの困難な出来事については書きました。男の嫉妬は本当に怖いです(笑)。嫉妬は何も生まないとは言いません。切磋琢磨する活力になると言う人もいます。でも僕にしたら、「そんなもん活力にせんでええやん」と。嫉妬受けた方も、する方も幸福にはなれないと長く生きてきて思いました。

55歳で吉本興業の社長を引き受けた時は、「嫉妬だけはしないようにしよう」って心に決めたんです。それは今の社長である岡本くん(編集部注・岡本昭彦氏)に社長を引き受けてもらってからも、心がけています。だから自分が吉本の社長になって決めた「定年廃止」とか「一部上場廃止」などありますが、時代に即して、その時の社長が覆してくれていいと思っています。「これだけは残してほしい」ということはありません。岡本くんに社長を引き受けてもらう時、これからの会社のことは何も相談せんで決めてくれてええから、と伝えました。

ところがね、会長になって最初の頃、2人でテレビ局行ったりした時に、「岡本さんには本当~に世話になって、この前もどうのこうの」ってそっちだけ盛り上がったりすると、心の片隅に「…え?俺は?」っていうのが去来するんです(笑)。男ってそういうのが本当にしょうもない。会食で座る順番とか、相手もどう勧めたらいいか分からん顔してますし、自分が上座に座るべきか岡本社長に譲るべきか判断に悩んでウロウロしたり。

挨拶するのも契約書にサインするのも、「あ、そうだそうだ、俺じゃないんだ、岡本社長がするんだ」と最初は慣れなかったりね。嫉妬しないように自分に言い聞かせてはいるんですが、自分に嫉妬の感情がないと言えば嘘になる。
だからこそ後輩が誉められた時に、心の底から「ありがとうございます」って言える大人になりたいなって強く思ってますね。もう70ですけど。(笑)