チューリップ最後のコンサートはマスクなしで

――声援といえば、今年のツアーから声出しが可能になりました。まだマスクはしたままですが、発声禁止だった昨年のコンサートとは、やはり雰囲気が変わりましたね。

コロナ禍でのコンサートはつらかったですね。僕らのコンサートでは、アンコールで客席と一緒に歌うことをずっと続けてきたのに、それもできない。仕方がないから、客席のみなさんの手拍子に合わせて、メンバー全員で歌っていました。

いつのまにか、そんな状況にも慣れてしまっていたのですが、ようやく、声出しも、「心の旅」や「魔法の黄色い靴」の大合唱もできるようになった。マスク越しでも、みなさんの声は僕らにしっかり届いています。客席のみなさんも歌う楽しさを感じてくださっている様子で……。コンサートは一方通行のものではないと、今更ながら気づかされました。

――「魔法の黄色い靴」はファンのみなさんにとっても特別な一曲ですね。歌にある魔法の靴とは、青春時代に戻ることができる“魔法の靴”だったのかもしれません。

なるほど、言われてみれば……。発売当時、あの曲は「メルヘンすぎて売れない」って言われたんですよ。あの曲をつくったのは、学生運動が盛んな生々しい時代でした。僕自身、そんな現実から逃げるために「魔法の黄色い靴」を書いたのかもしれません。でも、当時の社会や世相を反映した曲ではなく、メルヘンっぽい歌だから、今も気持ち良く歌えるのでしょう。青春時代に戻ったかのような気分になるのにふさわしい曲だと思います。

ですが、まだ完全な形ではありません。マスクを着けたままだと、歌っているお客さんももどかしいんじゃないですか? かつてのように、みんなで思い切り大きな声で歌ってツアーを終わりたいという願望があるんです。

――チューリップ最後のコンサートは、マスクをはずして盛り上がりたい?

はい。客席もマスクなしで歌える日が来るまでがんばれるといいな……そんな夢を見ております。ありがたいことに、みなさんが「今年で最後と言わず、もっとやって!」と言ってくださるし。

――そうなると55周年のツアーを期待してしまいます。

いや、いや、だからといって、全国を回る55周年ツアーは体力的に絶対に無理ですよ! たとえば、メンバーがアコースティックギターを片手に弾き語りをしながら、共に再会を喜び合う同窓会のような集まりなら、できるかもしれませんけど。

後編へ続く