うまい力の抜き方
――「サボテンの花」をはじめ、この50周年ツアーでは選曲されなかった名曲、代表曲もたくさんあります。ちょっと残念に思っているファンも多いのではないですか。
しっとりした曲はごまかしがきかないので、やらないことにしたんですよ(笑)。僕の体力のこともあるし、なるべく姫野(達也)君が歌う曲を多くしようと……。ほら、「サボテンの花」だと、僕が歌わなきゃいけないし。それは冗談としても、あの曲をメンバーと一緒にやることに、客席のみなさんもあまり馴染みがないのでは? チューリップとして出したときはあまり売れなくて、僕がソロになってから、ドラマ主題歌としてヒットしましたからね。
――確かに今回は、姫野さんがメインボーカルを務める曲が多かったですね。それにしても、15分の休憩をはさんで3時間近いライブをこなしておられるのは、ほんとうにすごいです。
気力は十分なんですよ。とはいえ、気力と体力は両輪なので、気力を出しすぎると体力が落ちてしまう。だから、がんばりすぎないというか、できるだけ負担のないように……。50年以上やっているので、そのあたりのさじ加減は心得ています。
最近はストレスに負けちゃいますからね。ストレスがかかっているのを自覚すると、闘う力がなくなってくる。若い時はストレスを感じるような出来事があっても、「ちくしょう!!」と自分を奮い立たせていたのですが……。まあ、九州から出てきた田舎者でしたからね。都会人にバカにされないようにがんばらなきゃと無理をしていたし、とんがっていた。だから、かなり疲れましたよ。
最近は、人生のゴールも近づいてきたし、もう力を抜いてもいいんだと考えられるようになりました。うまい力の抜き方がわかってきたのかもしれません。ランナーがゴール直前にちょっと力を抜くような感覚かな。それに、パフォーマンスに力が入りすぎていると、見ている側も気持ち良くなれないんですよ。客席の皆さんの心地良さも考えて、できるだけリラックスした状態に見えるよう、適度に力を抜くようにしています。もっとも、それで失敗することもあるんですけどね。