(イラスト:かやぬま優)
あちこちガタがきた体をなんとか長持ちさせたい。そう考えて、薬を服用しているうちに、数が増えている。とはいえ、薬は万能ではありません。「服用の仕方次第で、天使にも悪魔にもなる」と言います(構成=島田ゆかり イラスト=かやぬま優)

副作用がある場合も。高齢者には負担が大きい

読者の中には、年齢を重ねて不調が出てきたから、いろいろな病院やクリニックを訪れ、その都度処方された薬を言われるがまま常用している、という人が案外多いのではないでしょうか。私のクリニックを訪れる患者さんの中にも、かなりの種類の薬を飲んでいる人がいて驚くことがあります。

薬は、肝臓で多くが分解され、血流に乗って全身をめぐり、不要になったものは再び肝臓や腎臓へ。その後排出されるのですが、高齢になると、肝機能や腎機能が低下するため、薬の血中濃度が高くなったり、薬効が強く出たりする場合があるのです。

ですから、痛みを緩和するなどきちんとした目的がある場合は別にして、「これを飲んでおけば安心」「念のために飲んでおこう」と、お守りのように服用するのはおすすめできません。

加えて、薬にはメリットと、デメリット(副作用)があることも覚えておいてください。副作用とは、目的以外の好ましくない作用のことを言い、眠くなるなどもその一例。めまいや嘔吐、肝・腎機能障害、発疹のほか、まれにアレルギーを引き起こすこともあります。

アレルギーが重篤になるとアナフィラキシーショックを起こすこともあるので、甘く見てはいけません。医師は、デメリットよりメリットのほうが大きいと判断した場合にのみ薬を処方するのです。

と、少々脅かしてしまいましたが、薬は長い時間をかけて研究され、効果の検証や安全性を確認し認可されたもの。治療や症状の緩和を目的につくられており、私たちの健康に役立つものであることは間違いありません。

基礎研究から臨床試験まで10年近くかけて行い、製造・販売後も、副作用や有用性などを4~10年ほどかけて追跡調査します。さまざまなデータが集められ、有効性と安全性が常にアップデートされているのです。

むやみに恐れる必要はありませんが、薬は天使にも悪魔にもなりうるということだけは頭の片隅に置いておいてほしい。そのうえで、自分の体調に合わせて、最低限の量や種類を服用するよう心がけましょう。そのためには、薬の「種類」や「作用」について、基本的なことを理解しておく必要があります。