万一、薬が余ったらすぐに処分して

では、薬と上手に付き合い、できるだけ副作用のリスクを減らすには、どうすればよいのか。

大切なことは、「服用している薬について知る」ことです。医師は一人ひとりの症状に合わせて薬を処方していますが、患者さんのすべてを知っているわけではありません。患者さんによってはさまざまな病院やクリニックで処方された薬をまとめて飲んでいたり、市販薬を勝手にプラスしたりするケースもある。

ですから、自分が飲んでいる薬はどんな効果があり、どのような副作用があるのか、最低限知ることがとても重要なのです。

すでに今、複数の薬を服用している人は、かかりつけ医に「これらの薬を同時に飲み続けて問題ないか」を相談してみてください。医師から説明を受けても理解できない場合は、ご家族の誰かと一緒に聞くとよいでしょう。薬についてしっかり尋ねられれば、医師は丁寧に説明してくれるはずです。

また、最近ずいぶん定着してきた「お薬手帳」も活用しましょう。「薬をたくさん飲んでいるので見せるのが恥ずかしい」という人がたまにいますが、服用する薬が多いほど薬剤師にきちんと見せなければ意味がありません。とくに高齢者は、肝機能や腎機能が低下している場合があるため、飲み合わせなど、専門家に見てもらうほうが安心です。

市販薬を服用する場合も、薬についている添付文書を必ず読むようにしましょう。文字が小さいとか、難しくてわからない場合は、薬局で薬剤師に聞いてください。

それから、処方薬を自己判断で飲むのをやめたりしないことも重要です。とくに抗生物質は、菌が駆逐される前に薬をやめてしまうと耐性菌ができ、ぶり返す可能性があります。医師は計算して薬を処方しているので、必ず正しく、最後まで服用しましょう。

また、「余った薬はどうすればいいのか」と聞かれることがありますが、そもそも余ることがおかしい。万一、余っていたらすぐに処分してください。家族が間違えて飲んでしまったり、ご自身が自己判断で服用してしまったりするのを避けるためです。

最後に、少し厳しい言い方になりますが、多少の不調は薬に頼らないのが一番。過剰な我慢は必要ありませんが、「薬が絶対」という考え方も間違っています。

たとえば頭痛薬を飲みすぎると、「薬物乱用頭痛」という痛みを引き起こす可能性がありますし、湿布薬の使いすぎもおすすめできません。経皮吸収された成分が細かい血管に入り、全身をめぐって患部以外の部位で副作用を起こすことがあるからです。

便秘薬の常用は、自ら腸を動かす能力を低下させることにも繋がります。私は、たとえばインフルエンザでさえも自然治癒できる病気で、薬は不要だというのが持論。

薬に頼る前に、まずは食事内容や生活習慣の見直しを行いましょう。それでも病気や不調が改善しないようなら、副作用のリスクを理解したうえで服用する。薬と上手に付き合って、健やかな毎日を過ごしてください。

薬の素朴な疑問に答えます