どうにかならないことは一つもない

その反面、ピンチの時もありました。数えあげていたらキリがないのですが、最悪の事態だったのは、雇われママをしていた22歳の時のこと。「修」の閉店に連動して発生した1500万円の売掛金の一括請求を迫られ、高利貸し業者に追い込みをかけられてしまったのです。当時は売掛金のサイドがあり、60日後にはお客様からの入金があるとわかっていたとはいえ、当初は困惑して目の前が真っ白になりました。そもそも売り上げ発生から60日以内に支払えばよいとの契約だったのに、「直ちに全額」との要求にオロオロ…。でも幸いにして「いい根性」をしてましたよ(笑)。結局のところ「逃げられないのならしょーがない」と腹を括り、「かくなるうえはお金を工面するための算段をしよう」と、前向きに気持ちを切り替えたのです。

「クラブ由美」の開店当時に、他店の策略により店のスタッフを引き抜かれ、営業が立ち行かなくなった時のことも忘れられません。生存競争の激しさを思い知らされたわけですが、私は「卑怯なやり方には絶対に屈しない」と決めていました。こちらからクレームを入れても埒があかないのは承知していましたが、お金で引き抜くような心無いオーナーの店にはスタッフたちは居つかないはずだという確信がありました。実際、翌日から「あんな滅茶苦茶な店では働けません、もう一度、由美で働かせてください」と言って、すぐに戻ってきてくれたのです。

乗り越えられない壁はない、どうにかならないことは一つもない。これがピンチに遭遇した時に心で唱える魔法の言葉。自力で壁を超えれば、次に壁にぶち当たった時には「あの時だって大丈夫だったのだから、今度も必ず超えられる」と自分の能力を信じて自信を持つことができます。少なくとも私は、そんなふうにして強さを身につけてきました。

日々の中で起こるトラブルは、捉え方を変え、チャンスに変える術も覚えました。たとえばコロナ前私は、両脚共に変形性股関節症を患っていて、痛みで歩くこともままならず、ついには杖を必要とするまで悪化。手術をすれば改善するとわかっていても時間が取れずにいました。そんな中、コロナ禍による緊急事態宣言が発令。その間は、股関節は痛いうえ、店は時短営業や休業要請に追い込まれるし、踏んだり蹴ったりでしたが、この機会にしかできないことがあるはずと手術に踏み切ることにしたのです。おかげさまですっかりよくなり、以前にも増してパワフルに活動しています。