撮影◎初沢亜利

 

「周囲の方々から40年間もよく銀座で店を続けてこられたねと言われます」と語るのは、高級クラブの中でもトップクラスと名高い「クラブ由美」のオーナーママ・伊藤由美さん。多くの店がすぐに潰れるといわれる厳しい世界で女帝の名をほしいままにする人は、果たしてどんな人生哲学を備えているのだろう。夢を叶える人と叶えられない人の違いとは? そして、ビジネス成功の秘訣とは?

人と人をつなぐことが喜びであり、「クラブ由美」の使命

4月上旬に帝国ホテルで開かれた「クラブ由美開店満四十周年記念感謝の集い&ディナーの夕べ」には、石破茂氏や野田聖子氏、作家の百田尚樹氏、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長、フレンチ料理の三國清三氏など、政界、財界、文学界、芸能界、スポーツ界の名だたる顔ぶれが集まった。

親友の杉本彩さんが発起人を務めてくれまして、320名ほどのみなさまに祝福していただきました。神野美伽さんの歌や押尾コータローさんのギター演奏、野口五郎さんと岩崎宏美さんのディナーショーなど、芸能界の親しい方々の友情で彩られたパーティーは、華美というよりアットホームな心温まる雰囲気で開催でき本当に感謝でした。「クラブ由美」を愛してくださる方々に支えられてきたからこそ続けられたと思います。

きっと私は強運なのでしょう。一流のお客様が運んでくださる良い運気にあやかってきたのですから。しかも、どうやら運というのはキャッチボールで膨らんでいくようで、いつしか「クラブ由美」はパワースポットだと言っていただけるようになりました。それが嬉しくて……。

神野美伽さんの歌や押尾コータローさんのギター演奏も会場を沸かせた

 

私が大切にしてきたのは、クラブ由美は人と人をつなぐ場所でありたいということ。たとえば石破先生が岩崎宏美さんのファンでしたので、宏美さんとのお食事会にお誘いしたり、奥様の佳子さんが、古くからのお客様である伊勢正三さんのファンだと伺ってコンサートにご招待したこともありました。クラブ由美は「奥様公認の店」なのです。(笑)

ビジネスである以上、収益を求めるのは当然のことですが、自己の欲望を叶えたいというだけでは心が枯渇してしまいます。由美ママと出会ったら運が拓けたと言っていただくことが最大の喜びであり、クラブ由美の使命。お金は後からついてくると考えているのです。

なんて言うとカッコいいのですが、ここに至るまでに順風満帆だったというわけではありません。

私は情に脆いというか、脇が甘いというか……。お金に困っていると聞くと、つい親身になって貸してしまい、裏切られたことも数知れず。催促するのは悪いかなと思っていたところ、「お金なんて借りたっけ?」と言われたことがあって、以来、人に決してお金は貸さないと誓いました。

でも基本的に甘いんですよ。同じ人に二度も騙されたこともあって。金銭トラブルを起こして解雇したスタッフが、反省していると謝ってきたので、つい情に絆され受け入れ、またお金をだまし取られてしまって……。ここまでくると情けなくて人にも言えない。言っちゃってますけど(笑)。本当にいろいろなことがありました。

後半は野口五郎さんと岩崎宏美さんのディナーショー。左は司会の南美希子さん