焼畑が問題になった原因の一つが温暖化
アグロフォレストリーを続けるのにどれほどの広さの土地が必要なのかを、間作に焼畑の移動耕作の要素を組み合わせたスーダンのアラビアガムの生産で見てみよう。
アラビアガムノキの幹に傷を付けて滲出(しんしゅつ)してくる樹脂を集めて加工したアラビアガムは、アイスクリームなどの食品添加物や水彩絵具に使われている。
植栽して4〜5年経つと樹脂を採取できるようになるが、15年を過ぎると生産量が落ちるので、燃材として伐採してしまう。その跡地に再植林し、アラビアガムが採取できるようになるまでの約4年間はキビ、ゴマ、ピーナッツなどを栽培する。
そのため16区画あれば、毎年どこかの1区画が伐採され、4区画で作物の栽培が続けられるので、1区画1ヘクタールとすると、一家族に16ヘクタールの土地があれば持続的な農業がやっていける。
間作は1ヶ所で複数の植物を育てることで相互に影響を与えあうので、立地環境が多様になり、生態系が複雑になる。その結果、農業や林業単独よりも気候変動への耐性が高くなり、持続性のある生産システムで、多くの生態系サービスを提供できる。
その点では焼畑も同じで、焼畑を繰り返す地域全体には生育段階の違う林分がいくつも併存するので、地域の環境は多様になる。焼畑は熱帯林を持続的に利用できる唯一の生産システムであり、焼畑は森林を破壊するものではない。
しかし、焼畑のときの火入れが、これまで見てきたように、大規模な森林火災を引き起こす原因となっていることも事実である。休耕期間の短縮などによって焼畑の本来の合理的な実施方法が歪められたことと、温暖化による森林の乾燥があいまって、焼畑が森林を破壊する原因になっているのは残念である。
森林の持続的な利用を促進するには、焼畑を禁止するのではなく、森林の再生の程度を適切に評価し、十分な休耕期間を設定し、継続的に森林を利用し続けられる安全な焼畑を復活させるための技術開発が求められている。