出生届を出せない事情
認知の申立は子どもから行われます。しかし、子どもは1歳数カ月で未成年のため、実際には親権者である母親が法定代理人となって申立が行われました。
この子どもは、出生時に出生届を出してしまうと、離婚する前ですから、当然当時の夫の子どもとして戸籍に記載されてしまいます。それを避けるために、出生届を出していません。夫との離婚が成立した直後に出生届を出したらどうなるでしょうか。
先に述べたように、離婚後300日以内に出生した子どもは、直前に結婚していた父親の子どもという推定を受けます。しかし、このケースはそれどころではなく、婚姻期間中に出生していますから、当然、婚姻していた当時の夫が父親と推定されます。
これを覆すためには、一般的には当時の夫から、自分はこの女性と婚姻していたが自分の実子ではないという「嫡出否認」の申立をしてもらいます。
この子どもを受胎したと推定される時機に、夫と不仲になっているばかりではなく、完全に別居状態にあって、両者の間に性行為がなく夫の子を受胎した可能性がないというのであれば、女性から「親子関係不存在確認」の申立をすることも可能です。これが通常の手続と言ってよいでしょう。