鮎川さんいわく、不倫した夫との離婚を拒否する妻のケースは「幸福な離婚」のヒントになるかもしれないそうで――(写真提供:Photo AC)
結婚した夫婦の約3組に1組が離婚する日本。また約4組に1組は、夫婦のいずれかが再婚者と、もはや結婚と離婚は切り離せない時代に。一方で家族問題を研究する鮎川潤さんによれば、「離婚などで機能不全に陥った家族と少年犯罪などは密接な関係にあり、その意味でも離婚のあり方について私たちはより知っておくべき」とのこと。その鮎川さんいわく、不倫した夫との離婚を拒否する妻のケースは「幸福な離婚」のヒントになるかもしれないそうで――。

夫の不倫と離婚を拒否する妻のケース

〈年齢〉夫:五〇歳代後半 妻:五〇歳代後半
〈職業〉夫:会社員    妻:主婦
〈子ども〉二人:ともに二〇歳代で、すでに結婚
〈婚姻期間〉32年
〈背景〉家は妻の実家の敷地内に建てられており、ローンは完了
〈経緯〉夫から離婚の申立

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夫は勤務先外の趣味のサークルで、ある女性と親しくなりました。相手女性は五〇歳代前半で、偶然、関連企業に勤務する独身の女性でした。一回の結婚ののち離婚し、自分の子ども一人はすでに結婚しています。夫の携帯電話を妻が見て、親しい内容のメールを目にして関係が発覚。妻が夫の会社へ出向いて夫の上司に、夫と相手女性の関係について相談しました。

さらに、妻は、夫の携帯電話を使って、サークルの幹部メンバーに自分はその女性と関係を持ったため、サークルを脱退するというメールを送ります。このサークルは文化系のサークルで夫は主宰者となっていて、文芸的な分野でも才能があり、メンバーをまとめたり、励まして引っ張っていくといった立場にあり、夫にとっては非常に重要な生きがいとなっていたものでした。

このメールの出来事によって夫は、家を出て賃貸マンションで生活を開始します。家庭裁判所へ夫が離婚を求める調停の申立をする以前に、妻はすでに夫の相手女性に対して、五〇〇万円の慰謝料を求める民事訴訟を地方裁判所へ提起しています。

妻が夫に家庭か女性のいずれかを選択するように迫ったところ、夫は女性を選ぶと回答し、今回の申立に至っています。

家庭裁判所に離婚の調停が申し立てられる前に、当事者間で、また家族を交えて何度か話し合いがもたれ、激しい言葉の応酬がありました。とりわけ夫は、妻が会社へ出向いて夫の上司に「告げ口」をして対処を求めたり、サークルの幹部に勝手にメールを送りつけたりしたことに激怒しています。

妻は提訴した夫の相手女性に対する高額の損害賠償を求める民事訴訟を、家庭裁判所での家事調停と同時並行的に、地方裁判所で進めています。また、妻の側は、夫の離婚の申立に対して、婚姻費用の申立をしています。調停はどのような結論に至ったのでしょうか?