一次妄想と二次妄想

妄想は、専門的に言うと一次妄想と二次妄想に分けられます。

二次妄想は、患者の現在おかれている心理・社会的状況を考えれば、ある程度は了解可能なものです。さまざまな精神疾患に、そして時には健常者にも出現します。

『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』(著:林(高木)朗子・加藤忠史/講談社ブルーバックス)

たとえば、職場での人間関係に悩む人が持つ「同僚から避けられている」という被害関係妄想、落ち込んで自責感が強まった人が持つ「お金がない。破産してしまう」というような貧困妄想、認知症の方が持つ「自分の持ち物を嫁に盗られた」という盗害妄想といった具合です。

他者から見れば、「考えすぎかもしれないけど、そういう風に考えてしまうのは分からないでもない」というように捉えられるかもしれません。

それに対して一次妄想は、真性妄想と言われるように、なぜそのような考えに至ったか了解できないものであり、「自分は神の生まれ変わりだ」と確信を持ったりする妄想着想、ある知覚に対して唐突に特別な意味づけがなされる妄想知覚という現象があります。

たとえば、「今、黒い猫が目の前を通過したのは、FBIが自分を追跡しているからである」 と突然に確信するという具合です。

このような一次妄想は、統合失調症に特有であり、知覚や認知などの高次脳機能の統合に混乱が生じていることが示唆されます。

その後、意欲が低下して引きこもることが多く、認知機能の障害も進行し、社会復帰が難しくなることがあります。