適度な距離感が大切

家制度のもとに家族が集(つど)っているという旧来の感覚のままだと、「家族だから」という理由で、いつか誰かをないがしろにしてしまう瞬間が来てしまう。

たとえば、「長女なんだから、おまえがやれ」とか「親なんだから、責任をとるのが当たり前だろう」とか、乱暴なことが簡単に言えてしまって、個々へのリスペクトが即座に欠落してしまうんです。

どんな関係性においても、個人の意志が尊重されないまま何かを強制されるのは、やっぱりおかしいですよね。

だから家族であっても、お互いの意志をちゃんと尊重し合える距離感をとっておくほうが、より健全だと思います。

距離が近すぎると、共倒れになってしまいがちだから。

そして互いが適度な距離感を保つためには、各々の個がしっかり確立している必要があるんだと思います。

だから、たとえば自分の親に、あらかじめ老後は施設に入るかどうか相談しておいて、プランを立てておくのも立派な愛情だと私は思います。

とまあ、いろいろ熱く語りましたが、私の意見だって、数多(あまた)ある価値観のひとつ。

「そうは思わない!」という人も、もちろんいると思います。

さまざまな家族観や結婚観があるのは当たり前で、大切なのは、それぞれが願う「家族のかたち」や「結婚のかたち」を選択できる社会である、ということだと思うんです。

残念ながら今の日本は、まだそこからはかけ離れているのかもしれないな……。