――萩焼の歴史や特徴に対してどうお考えですか?
渋谷 近年の話でいうと、お茶の先生方が御茶碗を「お道具」というよりも「美術品」というカテゴリーでとらえてくださってますよね。「やっぱり萩焼は違うね」という形で表現をして頂いている。他の焼物とどう違うの?と聞かれますが、萩焼の良さは美術品でもあるし、その派生的なもので日常使いの器もある。
その上で「萩の七化け」と呼ばれる、使えば使うほど貫入(焼きあがった陶器を冷ます過程でできるひびのような模様)に茶渋などが染み込んでいき変化していく様は、萩焼にしかない圧倒的な特徴ですよね。萩焼は他の焼物と比べると少し高いじのですが、茶人の皆様に愛され、今の萩焼は価格的にちゃんとブランド化できている。
歴史を紡いで頂いた先輩方に僕は凄く感謝してますし、喜ばしいことですよね。
――「やりたいことを作品に投影する」というニュアンスについて教えてください。
渋谷 基本的に軸は一つです。引き算的な、そぎ落として洗練させていく仕事の中で、質感や存在感を如何に表現できるか?ということを大事にしています。ただそれだけずっとやり続けているわけではなく、時にはちょっと足してみたくなることもあります。
39歳~40歳の頃に県立美術館で個展をさせていただいて、20点から25点ぐらい出展しましたが、独立後の作風という意味では良い区切りになりました。それ以後、次のシリーズということで足し算も踏まえた新しい作風のチャレンジを行っています。
――新しいチャレンジを行うことは怖くなかったのでしょうか?
渋谷 一つのことをやり続けるという事は素晴らしいことだと思うんですけど、やっぱり二面性とか多面性とか、必ずあるんですよ。だから全然違って見えても、表裏のような感じで、丁度良く僕の中心が保たれる、みたいな。だから純粋にやりたいことをやる。
自分らしくそれを表現しているんだから、躊躇はなかったですね。見た目は違う作風でもやっぱり僕の中ではちゃんと共通項があると思っています。