――インスピレーションの源泉は何ですか?

渋谷 個々の作品に対しては、それなりに全部ありますね。例えば萩の沖に見島っていう萩焼の土が取れる島があり、そこから粘土が採掘できない状況になってしまったんです。原因を視察に行き、現地で島を見ていたら凄く寂しい気持ちになったんですね。その気持ちと、そこでとった粘土、そこの景色っていうのを残したいなと。それらをイメージしてつくった作品などありますね。

他には例えば刀のようなイメージだったり。ああいう全てをそぎ落としたうえに、出来上がるものとか…。作品と向き合う感情も含め、研ぎ澄まされた感覚が大事ですよね。実は食器はそんなに薄くしないほうがいいと思うんです、使い方を考えると。でもやっぱりかっこいいですよね、そっちの方が(笑)。極端に脆くはないんですが、薄いと欠けやすいので、その分、本当に大事に使っていただきたい。大量生産品じゃないですから。

――全部一点物ですもんね。先ほどから仰っている引き算と洗練された美が渋谷さんのやりたい事としてうまく融合をしているように感じています。

渋谷 色々なことを経験し、やってみたうえでという事なんですが、そういった体験も全部作品の中に閉じ込めていきたいので。やったらやりっぱなしじゃなくて、作品一つ一つに様々な要素を入れ込んでいるので、一言で説明するのはちょっと難しくなってるな、と思っています。

――ある意味作品が時系列でちゃんと、どんどん進化してるということですよね。

渋谷 自分自身が投影されるものですよね。結局はどう生きるかで形も変わってくるし、そう思っています。刀鍛冶の方にお話をお伺いした時に、自分が研ぎ澄まされてないと研ぎ澄まされた刀にはならない。刀と自分は実は一緒だと仰っていたんですね。

物作りって、僕はそういうものだと思っています。

「普段使いも出来るように」と作られる渋谷さんの「今」を閉じ込めた皿とお椀(撮影:延秀隆)