確実に縮小していくマーケット

今後、日本の18歳人口が増加に転じる可能性は極めて低い。「ない」と言っても良いでしょう。これまでと同じことを続ける限りは、確実に縮小していくマーケットです。

となれば、従来とは異なる層を学生として呼び込む施策が必要になってきます。ですが、それも簡単ではありません。

(図)18歳人口と大学入学者数、大学進学率の推移<『大学職員のリアル-18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』より>

多くの大学が関心を寄せるのは、社会人学生。通信制課程や夜間大学院に注力する大学もあります。ですが法人の経営状況を変えるほどの成果はまだほとんど出ていません。

日本企業で働く会社員にとって、安くない学費を払い、貴重な時間を費やしてまで大学や大学院で学び直しをする必然的理由がないからです。

MBA(経営学修士号)や博士号を取得した途端に給与が跳ね上がる、他の社員とは異なる特別なキャリアパスを約束される、転職市場でオファーが押し寄せるといったメリットがあるなら話は別ですが、現時点ではあまり聞きません。

日本の人事・雇用システムが、新卒一括採用、年功序列、終身雇用などを特徴とする、いわゆる「メンバーシップ型」雇用を基盤としてきたことが大きな理由でしょう。

日本では正社員としてひとたび社員を雇用すれば、簡単に解雇はできません。事業内容が急に変化しても、企業の責任下で配置転換や研修を行い、社員の雇用を維持することが求められます。

こうした人事制度の中では、特定分野で突出した専門性を持っている人よりも、会社の辞令に従って異動し、必要な業務を覚え、周囲とうまくコミュニケーションを取りながら新しい仕事に馴染んでいける人が重宝されることになります。

受験で難関大学に合格したという意味での学歴(学校歴)を重んじたり、「コミュニケーション力」を新卒採用で重視したりといった日本企業の慣習も、こうした事情によるところが大きかったのです。

このような社会慣習がある限り、大学が社会人学生獲得のために努力しても、やはり簡単にはいかないのでしょう。