倉部先生は大学職員について「これから業界が迎える市場環境の変化は楽観視できるものではありません」と言っていて――<『大学職員のリアル-18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』より>
大学で事務を行う「大学職員」は人気の職業であり、「年収1000万円以上で仕事も楽」という噂を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。「その内情は当然ながら、実に多種多様です」と語るのは、元大学職員で追手門学院大学客員教授の倉部史記先生。その倉部先生は大学職員について「これから業界が迎える市場環境の変化は楽観視できるものではありません」と言っていて――。

18歳人口激減で、経営危機も

18歳人口は減少の一途をたどっています。

定年退職を間近に控えた方ならともかく、これから大学職員になろうという方や30歳前後までの若い方にとって、これから業界が迎える市場環境の変化は楽観視できるものではありません。

そう簡単に経営破綻しないという点は確かに事実なのですが、「あなたが定年退職を迎えるまで絶対に破綻しない」とは限りません。ここは注意していただきたい点です。

それを象徴するような出来事が最近もありました。恵泉女学園大学が、2024年度より大学および大学院の学生募集を停止すると発表したのです。

「18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました」と、公式ウェブサイトで説明しています。

同大は教育内容で高く評価されてきました。私も授業を見学したことがありますが、どの授業も少人数制で教員との距離が近く、アットホーム。多くの女子大に共通するさまざまな良さを感じました。

しかし近年は学生募集に苦労していたようで、22年度の定員充足率は56%まで落ち込んでいたとのこと。個人的にも募集停止は残念でなりません。

学校法人恵泉女学園は大学のほか、恵泉女学園中学・高等学校も運営していますが、そちらは今後も存続させるようです。不採算部門を清算することで、別の事業を存続させる経営判断なのでしょう。

ただ大学の教職員がみな中学・高等学校に異動できるわけもなく、これから厳しい状況に直面する方もいるはずです。