歯周病による出血で、細菌や毒素が全身を巡る

では、なぜ歯周病が、このように、全身の健康にかかわっているでしょうか。

まず、感覚的にイメージしてみましょう。

例えば、膝の擦り傷を泥がついたまま消毒もせず、バイ菌でいっぱいの雑巾をあてていたらどうでしょうか? 患部から雑菌やウイルスが入り込み、患部の化膿や炎症による発熱が起こっても不思議でありません。

また、雑菌やウイルスが血液から血管に流れ込み、全身疾患にいたる場合もあります。

例えば破傷風は、傷口から体内に入った破傷風菌が増殖し、脳や神経を侵すことで呼吸障害や痙攣(けいれん)などさまざまな症状を引き起こす病気です。

実は、歯周病による歯ぐきからの出血も似たような状況です。

歯周病もまた、単に歯ぐきが損傷し、歯が抜けるだけの害ではありません(写真提供:Photo AC)

歯周病は、少し進行すると歯ぐきから出血を起こすようになります。その出血の理由は、歯と歯ぐきのあいだに「歯周ポケット」という隙間がつくられ、炎症によってできた潰瘍(かいよう)がプチっとつぶれるから出血するのです。

仮に、歯に5mmの深さの歯周ポケットがあって出血した場合、それは米粒ぐらいの大きさの傷口といえます。

そして、その傷口は歯周ポケットのなかで歯と接しています。

歯周ポケットの内側にあって歯ブラシの毛先も届かない歯には、食べかすを栄養にしてさまざまな口腔内細菌が繁殖し付着しています。

つまり、傷口に雑巾をあてているのと変わりません。

歯周病菌をはじめとする細菌がつくり出す毒素や細菌そのものまで毛細血管に入り込み、全身を回遊します。