正しく寝れば、一晩で300キロカロリーを消費できる! 30年間で3万人の肥満治療にあたってきた肥満外来の医師・左藤桂子さんが編み出した、「痩せる眠り方」を実践してみましょう。(構成=村瀬素子)

寝入りばな3時間に脂肪燃焼ホルモンが出る

肥満に悩んでいる人の多くは、ぐっすり眠れていない──。私は睡眠学の専門家ではありませんが、内科医として肥満、糖尿病など代謝系の治療に長年携わってきた経験から、そのことに気がつき、患者さんに正しい睡眠法を指導してきました。

人はぐっすり眠ると痩せる。私がそれを確信した実例を挙げましょう。睡眠を妨げる病気の一つに、睡眠時に気道が塞がって呼吸が停止する「睡眠時無呼吸症候群」があります。喉に脂肪がたまってこの病気になった肥満体形の患者さんに、シーパップという気道を広げる器具を装着すると、よく眠れるようになり、それに伴ってみるみる体重が落ちていったのです。

なぜ熟睡できると痩せられるのでしょう。そのカギは成長ホルモンにあり。寝ている間に分泌される成長ホルモンは、成長期を過ぎても生涯にわたって出続けます。傷ついた細胞を修復し、体を再生するのがその役割。また代謝を促進し、蓄積された脂肪を燃焼する働きもあるのです。そのおかげで、私たちの体は一晩ぐっすり眠るだけで約300キロカロリーを消費します。

一方、睡眠時間が短かったり眠りが浅かったりすると成長ホルモンの分泌が減少し、脂肪が代謝されず体内に蓄積することに。そこで、成長ホルモンの働きを高め、健康的に痩せるのが、私が提唱する睡眠法です。そのポイントをお伝えしましょう。

第一に、眠りはじめの3時間は、途中で目覚めないようにぐっすり眠ること。成長ホルモンは、寝ている間ずっと出ているわけではなく、深い眠りに入ったとき活発に分泌されます。睡眠には、脳が活動した状態である浅い眠りのレム睡眠と、脳も休養する深いノンレム睡眠の2種類があり、私たちは、この2つの睡眠を約90分サイクルで繰り返しています。通常、大人の睡眠は、最初の2サイクルに最も深い眠りが表れ、この間に成長ホルモンがまとめて分泌されるので、はじめの3時間が重要なのです。