あれ? 自分がいなくても大丈夫だな

オリックス1年目の21年シーズンオフ、契約更改の席で、僕は「来シーズン限りで引退します」と伝えました。

1年やってみて立ち位置が分かりましたし、自分の力量とこれから出てくる選手の力量を考えると、若手を積極的に起用したほうが絶対にチームのプラスになる。もう主力としてやれるわけもないので、そこに未練はありませんでした。その時点で「完全燃焼」できていたのだと思います。

引退を決めた理由はもう一つ。これはいろいろなところで話していることですが、選手たちの成長を「うれしい」と感じるようになったことです。

兼任コーチという立場で選手といろいろな話をし、また見てきた中で、だれかが力を発揮してくれたり活躍してくれたりすると、純粋にうれしいと思えました。その感覚はオリックス1年目からあり、もう自分はマウンドに行かなくてもいい、行くのが怖い、とさえ思っていましたからね。

オリックスにはもともと能力の高い投手がたくさんいました。ただ、チームとしてうまく機能せず、僕が入る前は2年連続最下位。14年に2位になって以降、ずっとBクラスでした。

18年間の現役生活、最後の一球。渾身のストレートを投げ込んだ(写真:『#みんな大好き能見さんの美学(ポーカーフェイスの内側すべて明かします)』より)

ただ、僕自身そこまでオリックスの選手たちのことを知らなかったので、40歳を超えているとはいえ、まだまだ戦力として働けるだろう、コーチ兼任ではあるけれど、選手としても拾ってもらった恩返しはできるだろうと思っていました。ところが……。

「あれ? 自分がいなくても大丈夫だな」

1年目のキャンプで気づいてしまったのです。そこからのスタートだったので、1年目のシーズンを終えて「引退」を決断したのは自然なことでした。