大きな落とし穴
世界の陸上界を見たときに、日本はスピードの面で大きく差をつけられていた。
20世紀後半から、アフリカ勢はマラソンでこれまでは考えられないようなスピードで走り、世界記録が更新され続けた。
私には就任以来、箱根駅伝のために培ってきたスタミナ強化のノウハウがある。今度はこうした才能ある若者の力を伸ばし、スピードとスタミナをうまく融合させ、将来的に日の丸を背負える選手を育成したいという思いが芽生えた。
この時点でコーチ就任から含めて、10年の指導のなかで箱根駅伝は4連覇を含め、5回の優勝を遂げていた。そこに向けた選手の育て方、勝ち方はもうある程度はわかっているという自負があるうえに、エリート選手が加わる。
「これまでと同じやり方で行けば結果はついてくるはず」というおごりが、心に生まれてしまった。これが大きな落とし穴になった。
※本稿は、『必ずできる、もっとできる。』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
『必ずできる、もっとできる。』(著:大八木弘明/青春出版社)
「もはや今までのやり方は通用しない」。時代の流れを感じ、新たな指導方法を模索していた大八木監督は、選手との接し方を変え、再び強いチームをつくった。厳しい指導が代名詞ともなっていた監督は、令和の時代になり、何をどのように変えたのか。伸び悩む組織を運営する管理職やリーダーに向けて、その指導方法を紹介する。