大八木総監督「同じやり方では成功は続かない」(写真:駒澤大学陸上部のインスタグラムより)
組織のリーダーや、企業の管理職のなかには「時代の変化に対応しなければ」「なかなか自分を変えられない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。2022年度の大学3大駅伝で駒澤大学陸上競技部を3冠に導き、2023年4月から総監督を務める大八木弘明氏もまた、当時、時代の流れを感じ、新たな指導方法を模索したといいます。令和の時代になり、何をどのように変えて再び強いチームをつくったのでしょうか。大八木総監督いわく「同じやり方では成功は続かない」そうで――。

“常勝軍団”で芽生えたおごり

2008年の箱根駅伝で勝った後、2021年に再度の優勝を手にするまで実に13年かかった。

そこまでの間、なぜ勝てなかったのかを改めて考え直してみたとき、まず「心におごりが生まれたから」という理由が思い浮かぶ

私は1995年に駒澤大学陸上競技部のコーチとして着任した。その前年度、駒澤大学は箱根駅伝予選会を通過し、29年連続で本大会に出場したものの、通過校のなかで最も低い順位だった。

「来年、駒澤は予選で落ちるだろう」と周囲から言われるなか、大学関係者に立て直しを依頼されてのスタートだった。

当時、寮生活は乱れ、練習もおろそかになっていたが、私は選手に真正面から向き合い、少しずつ強化を進めてきた。

目指したのは競技者として意識が高い集団だ。朝練習の集合時間や、寮の門限を定めるなどルールを明確に定め、それを選手に守るように求めた。

もちろん勉強をおろそかにすることは許さない。そして練習は常に私が指導し、すべての面で厳しく接した。

今思えば本当に泥臭くやってきたと思う。高校時代に全国大会で活躍してきたエリート選手などがいなかったこともあり、ひたすら練習に励んで強くなるしかないと考え、地道に長い距離を走り込んだ。

スマートさとは無縁で、コツコツと走り続け、スタミナをつける。言うなれば雑草集団である。