姉の安田祥子さん(右)と、妹の由紀さおりさん(左)(撮影:玉置順子(t-cube))

幼い頃から童謡歌手として活動を続けてきた安田祥子さん、由紀さおりさん姉妹。一時は別々の道を歩むも、あることをきっかけに童謡デュオとしてステージに立つようになりました。家族として仕事仲間として長い時間をともにしながら、ふたりの性格は正反対だそうで――。(構成:篠藤ゆり 撮影:玉置順子(t-cube))

母から提案された姉妹共演

由紀 姉妹で童謡を歌い始めて、今年で41年。こんなに長く続くとは思っていなかったわ。

安田 そうね。音楽の力のおかげじゃないかしら。童謡を聴いていると、日本の原風景が脳裏に浮かび、心が癒やされるとおっしゃる方は多いもの。

由紀 私たちも児童合唱団の頃から歌ってきて、飽きるどころか、その素晴らしさをますます実感しているものね。今から40年ほど前、デュオとして活動し始めた頃は、童謡アルバムは売れないと言われていた。母が「私の棺桶に入れる1枚を作りたい。手売りして、ご損のないようにしますから」とレコード会社の社長に直談判して、やっと出せたのよね。

安田 そうだったわね。

由紀 お姉ちゃんは大学卒業後にクラシックの世界に進み、私は歌謡曲の世界で頑張ってきた。そのふたりがタッグを組み、売れないと言われた童謡をあえて歌うのだから、中途半端な気持ちで始めてはいないし、簡単にやめることはできないと思っていたわ。

安田 姉妹デュオの活動を始めたのは、私が40歳の頃。

由紀 1982年のデビュー15周年の時だから、私は30代半ば。その数年前からヒット曲に恵まれず、『紅白歌合戦』も落選続き。この先、何を歌っていけばいいのかと悩んでいたなかで、ふと、自分でNHKホールを借りよう!オーケストラを招いて、15周年のコンサートをやろうと思い立ったの。

安田 あなたは、大胆なところがあるのよね。由紀当時、個人事務所の社長をしてくれていた母から「気持ちはわかるけど、すごくお金がかかるわよ」と言われても、「それまでにお金を貯める!」と宣言。

でも、15周年まで1年という頃から、私だけで2時間歌えるかしらと不安になってきて(笑)。その時に母が、「お姉ちゃんはオーケストラの演奏で歌うことに長けているし、一緒に出てもらったらどう?」って。