婚活アプリは“カースト”を超える

コロナ禍によって、極端に困窮した人がたくさんいることも婚活によってリアルに知った。

婚活は人生をともに過ごす相手を探す活動なので、相手のことを深く理解しようと努める。生活や考え方を知ろうとする。だからこそ、たとえば商談とは違い、個人的な苦しみや悲しみや置かれている状況に意識がいく。

外国へ行かなくても、外国人と出会えてしまう(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

婚活がほとんど行われていなかった1980年代までの日本の社会では、同じ職場、同じ学校、友人の紹介で出会い、交際して得た縁で結婚することがほとんどだった。当然だ。まったく違う環境にいる相手とは接触しないので、交際しようがない。

すると、結果的に、育ちや、経済力が近い者同士で結ばれて、生活をともにする。伝統的なお見合いだったとしても、仲人や紹介者は意識的に、育ちや経済力がつり合う相手を見つけてくる。

ただし、学校、職場、友人・知人関係間の恋愛はリスクを伴う。成婚せずに別れた場合。周囲の人間関係もしばらくはぎくしゃくする。職場恋愛は人事に影響するケースもあるだろう。

このようなリスクが、婚活ツールにはほぼない。周囲に知られることなく出会い、交際し、成婚したり別れたりする。

婚活アプリを利用すると、乱暴な言い方をするが、今まで接触が難しかった金持ちと貧乏、北海道在住者と沖縄在住者がふつうに出会ってしまう。外国へ行かなくても、外国人と出会えてしまう。

婚活はいわゆる“カースト”の壁をいともかんたんに乗り越えてしまった。