ギャップを新鮮に感じる

1998年に公開されたアメリカ映画に『ユー・ガット・メール』がある。ニューヨークを舞台にしたラヴ・コメディだ。主演はトム・ハンクスとメグ・ライアン。

トム・ハンクスの役は、マンハッタンで大型書店を経営するジョー・フォックス。メグ・ライアンの役は、子ども向けの本をそろえた小さな書店を営むキャスリーン・ケリー。ジョーの書店の台頭で、キャスリーンの店はつぶれてしまう。

1980年代までなら、同級生でもない限り、この二人は出会わない。育ちも考え方も経済力も交友関係も違うからだ。しかし、二人は敵対する相手とは知らず、匿名のままネットで交流してしまう。マッチングサイト、今でいうマッチングアプリで相手の正体を知らぬまま出会ってしまうのだ。昼間は生き残りをかけた憎き敵。しかし夜、ネットの中では心を許せる理解者だ。

『ユー・ガット・メール』はフィクションで、現代のおとぎ話。ラストで二人は結ばれて、ハッピーエンドを迎える。しかし、そこにいたる過程ではいがみ合い、傷つけ合う。育ちも考え方も違うからだ。婚活アプリがスタンダードになっている今、このような状況が日本のあちこちで起きているに違いない。

人は価値観が自分と近い相手に魅かれる、という意見も多い。確かにそういう面はあるだろう。しかし、ファーストコンタクトでは、価値観が必ずしも一致しなくても、引き寄せられる。むしろギャップを新鮮に感じるかもしれない。

それに、高学歴で上場している優良企業に勤めている50代の男性が、すさまじく美しい無職の20代の女性からアプローチされたら、マッチングする可能性は低くはないだろう。無職で困窮している美しい女性が人生の一発逆転を狙って、猛烈にアプローチするかもしれない。

あるいは、40代の女性開業医が20代の無職のアイドル顔の男に猛烈に口説かれたら、まっ、付き合ってみるか、と思うのではないか。仕事が順調ならば、若い男の面倒を見るくらい負担ではない。

かつて40代の美しい女性ドクターに、恋愛の悩みを打ち明けられた。女性は社会で成果を上げれば上げるほど、結婚が遠ざかるという。自分が上に立ち、いばりたい男は多く、女性が成功すると嫉妬して去っていくと話していた。類は友を呼ぶ。彼女のまわりには、仕事で成果を上げている女性が多く、みんな似たような悩みを抱えていた。

ところが、仲間の一人のエッセイストが、婚活アプリで恋愛をした。相手はひと回り以上若いイケメンの大工さんだという。若くて年齢差があり、職種も違うので、彼は彼女の成功に嫉妬しない。彼女は経済的に依存するつもりはないので、大工の彼が純粋に愛おしい。それを見た仲間の女性たちはみんな、年下の異業種の男にアプローチし始めたそうだ。

※本稿は、『婚活中毒』(星海社)の一部を再編集したものです。


婚活中毒』(著:石神賢介/星海社)

イケメンとはほど遠い容姿、身長は166センチ、バツイチ、58歳、それでも婚活で出会った女性は300人以上。楽しい婚活ライフを送る著者にやがて訪れる永久婚活状態とソロ人生を歩む覚悟とは? アプリ、相談所、パーティー、バスツアー……。いとも簡単にマッチングできる現代の婚活を実体験から描く。すべての成婚したい人必読の書。